米国の金利上昇に対する警戒
米10年債利回りが1.5%に迫る水準まで上昇しています。
1年以内に2%を超えると株高の動きが止まってしまうという見方も出てきました。
米長期金利の動向は株価の先行きを占う上で一番のリスク要因であるということが投資家の潜在心理に根付きつつあります。
金利上昇が本格化する可能性を見越して海外の投資家は幅広い業種で株の持ち高を落としておりそれが日本株の下落に繋がっています。
見かけの名目金利である10年債利回りは、将来の物価上昇率の予想である期待インフレ率と物価変動の影響を除いた実質金利に分解できます。
2月以降の名目金利の上昇は実質金利影響が大きいように思えます。
米長期金利と株価の相関関係では急激な金利上昇時は株価が下がる傾向にあります。
中期的には長期金利の上昇と企業業績の改善度合いのバランスがとれているかが焦点となります。
一方で、2013年以降で長期金利が上昇した5回の局面で米国のS&P500種の株価上昇指数が上昇した事実もあります。
1.9%程度の緩やかな金利上昇局面では28000円前後が下値支持線となりそうだという見解もあります。
金利上昇の影響
米金利の上昇をめぐってパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、4日の経済イベントにおいても、前月の議会証言と同様に強い懸念を示しませんでした。
マーケットはこれに大きく失望し、低金利を前提に買われてきたハイテクやネットサービスなどのグロース株が崩れ、幅広い銘柄に売りが広がりました。
来週(8-12日)は米国で9、10、11日にそれぞれ3、10、30年債の入札が予定されています。
今回の金利急騰の引き金は前月行われた7年債の入札不調だっただけに、市場には警戒感がでています。
しかし、3月5日発表の2月の米雇用統計で雇用者数が市場予想を上回ったことから、労働市況が改善しているととらえられダウは前日比572ドル高の31496ドルまで上昇しました。
相場はこの上昇局面で何度も短期的な下落を経験しているため、足元の調整から逃げ遅れた向きのシコリが上値に滞留している状態です。
また、信用買い残の水準も高く、切り返すには相当のエネルギーが求められます。
陰の極に当たる総悲観に達するまでは、買い方への逆風は続くと思われます。
それでも、確かな指針となるのか企業の業績です。
コロナ禍でコスト体質の強化が進んだこともあり、経済正常化がもたらす利益回復の勢いは強くなっています。
主要企業の業績見通しを直近更新した野村証券と大和証券は、2020年度の経常減益幅を従来から縮小した上で、21年度は3割近い伸びを予想しており、業績相場を迎える準備は着実に整ってきています。
12日がメジャーSQ(特別清算指数)の算出日に当たることも踏まえると、不安定な動きはまだ続く可能性があり、乱高下の激しい相場になりそうです。