東京株式市場は大荒れでした。
日経平均株価は2月前半に一気に水準を切り上げましたが、その反動も大きかったようです。日経平均は24日に484円安と大幅安になった後、25日は496円高と前日の下げ分をまるごと取り返しましたが、安心ムードが漂った投資家心理を再び谷底に突き落とすように週末26日は1202円安と大暴落でした。
終盤に狼狽売りが加速して24日に続く安値引けとなり、4年8ヵ月ぶりとなる下落幅で3万円大台はおろか、一気に2万9000円ラインをも下回りました。
足もとでは、これまで強気マインドを半ば信仰的に支えていた過剰流動性相場のコンセプトが崩れてきています。
米長期金利の急上昇
その引き金となったのは米長期金利の動向です。
25日の米国株市場ではNYダウが559ドル安、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は478ポイント安と急落しました。
これは米10年債利回りが一時1.6%台まで急上昇し、インフレ警戒モードを増幅させたことによるものです。
この1.6%という水準は2020年2月初旬以来、コロナショック以前のレベルとなります。
日本国内に目を向けても、直近で新発10年債利回りは0.17%台まで上昇しています。
これは、5年前、日銀がマイナス金利の導入を決めた時以来の水準であり、デフレ環境が地殻変動を起こし始めたという認識がマーケットに広がり始めています。
コロナ収束への期待感
新型コロナウイルス感染拡大は実体経済に大きなダメージを与えましたが、それも収束に向けた道筋が見えてきつつあります。
米ファイザー製をはじめ新型コロナワクチンの普及が政策的な後押しで想定以上のハイペースで進んでいます。
これが経済活動正常化への期待になり、自粛疲れの反動も考慮すると爆発的な消費を生む可能性もあります。
本来であれば、経済が活性化することは企業業績を反映する株式市場にとってもポジティブ材料のはずですが、ここで一つ問題が生じてきます。
コロナ禍であればこそ、これまで各国政府や中央銀行によって掛け値なしの財政出動や強力な金融緩和が行われてきました。
昨年3月下旬以降に形成された株高の本質はこの政策によってもたらされた金融相場でした。しかし、金融緩和政策を続ける大義名分が、コロナ収束とともに失われる可能性が高くなります。
金融緩和政策による金余りによって押し上げられた相場は、資金の流動性が収縮するプロセスにおいて、企業業績の回復を買うという業績相場へすんなりとはバトンを渡すことができないと思います。
そうした思惑が足もとの株式市場を波乱に陥れているのです。
リバウンド相場
しかし、ここで弱気になるタイミングが訪れているのではないと思います。
むしろこの株価の下落は押し目買いの好機かもしれません。
26日は大引けに機関投資家による株売り・債券買いの月末リバランスが行われます。
この機械的なアクションを見込んで、株をできる限り安い水準に落としたいヘッジファンドの仕掛けが入ったという見方もあります。
3月相場ではこのヒステリックな売りの反動が出て、月の前半にリバウンド局面が訪れる可能性が高いと思います。
現在の株式市場を不安定にしているのは、実体経済におけるインフレ懸念です。
コモディティ市況など川上では既にインフレモードですが、これが川下である消費者が日常で感じる物価の上昇にまでは大きく反映されていません。
それどころか、今週のパウエルFRB議長の議会証言では、米経済は雇用・物価上昇の目標から程遠い、との認識が強く示されました。
デフレ脱却がテーマとなっていた経済からいきなりインフレ経済になるということはないと示されました。
目先の波乱相場は行き過ぎた警戒感がパニックを生んだと思われます。
3月は11日にECB理事会、16~17日にFOMC、18~19日に日銀金融政策決定会合が行われる予定ですが、仮に全体相場が崩れた場合は、日米欧ともに強力な金融緩和政策の推進で足並みを揃えると思われます。
物価上昇が本当に警戒される局面にならない限り、各国中央銀行はテーパリング(量的金融緩和の縮小)に言及することはないと思われます。
今回の波乱相場の引き金を引いた米長期金利の動向は株式市場のバロメーターとして今後も注意が必要ですが、短期的に2%台なるというようなことはなく、落ち着きを取り戻す可能性が高いと思います。
そして、株式市場もバランスを立て直すことになるだろうと思います。